2026年2月9日月曜日

第11回きずなフォーラム(2025年度)  『自然共生サイト―参加型保全の新潮流―』の報告

 

当日は雪が舞う寒い日でしたが110名もの多くの方々が参加され
スタッフが急遽椅子を追加しました
ました.

信州生物多様性ネットきずなと長野県(自然保護課・環境保全研究所)の主催で,令和8年2月7日(土)、塩尻総合文化センターにおいて第11回きずなフォーラム『自然共生サイト ―参加型保全の新潮流―』が開催されました。今回のフォーラムは急遽決まった総選挙のために半年前から予約していた文化センターの講堂(350名)が使えなくなり,2階の大会議室(90名)へ場所が変更されました.そのため予定していた自然共生サイトのパネル展示は小さな会議室(34名)で行うことになりました.しかし,当日は雪が舞う寒い日でしたが110名もの多くの方々が参加されました.以下にその様子を紹介します.

(趣旨)
「信州生物多様性ネット きずな」は、「生物多様性ながの県戦略」の行動計画である「地域連携・協働促進プロジェクト」を効果的に推進していくために2015年に設立され,市民活動の連携を強化し保全活動の充実を図ることを目指して,毎年フォーラムの開催や環境教活動を実施してきました.本年度のきずなフォーラムは,「自然共生サイト ―参加型保全の新潮流―」をメインテーマに,環境省地域ネイチャーポジティブ推進室の数野 渚氏による講演を聞き,後半は各保全団体による具体的な活動を報告してもらいます.また今回は環境省信越事務所の協力で長野県で認定された自然共生サイトのパネルが展示されます.皆様方にとって自然共生サイトに対する情報を共有しその取り組み方法を探る場となれば幸いです.

(プログラム)
日時:2026年2月7日(土)12:00-17:30 (受付12:00から)
会場:塩尻総合文化センター (入場無料) 
     2階大会議室   :フォーラム会場
     2階204会議室:パネル展示会場
(進行)
12:00 受付開始
12時から自然共生サイトのパネルを2F 204会議室で展示
     
13:00 フォーラム開会(2F大会議室) 総合司会 江田慧子(関西学院大学)
挨拶 中村寛志(きずな会長)・岩井 顕(長野県自然保護課長)

中村寛志きずな会長の趣旨説明
岩井 顕長野県自然保護課長の挨拶


13:10 講演   「自然共生サイトについて」     数野 渚 氏
          (環境省自然環境計画課地域ネイチャーポジティブ推進室)

(講演要旨)近年、世界的に「ネイチャーポジティブ」という考え方が注目されている。ネイチャーポジティブとは、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことであり、従来の自然保護だけを行うものではなく社会・経済全体が生物多様性の保全に貢献するよう変革させていく考え方である。そしてネイチャーポジティブ実現に向け「30by30目標」の達成が必要である。これは2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標である。目標達成に向けて新たにOECM(保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域)を設定・管理することが重要である。日本では30by30目標達成のために、2023年度から民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を国が「自然共生サイト」として認定する制度を開始した。企業所有の森や都市緑地、里地里山等、今まで保護地域に指定できなかった場所も対象となり、これを法制化した「地域生物多様性増進法」が2025年4月に施行され、環境省、農林水産省、国土交通省の3省共管で認定することとなった。本年度2回審査が行われ、従前制度と合わせて2025年12月末時点で485か所が認定されている。


数野氏の講演のタイトルと目次

数野渚氏

13:45 取組報告
(1) ミヤマ株式会社
サイト名              Workcation Place 花伝舎
所在地(面積)     長野市戸隠2541-5 0.8ha
発表者(役職)     小林 正征(執行役員 広報室長)
発表タイトル         WorkcationPlace花伝舎における持続可能性を目指した生物多様性保全の取組み
発表要旨
               本発表では、標高1,000mの戸隠高原に位置する自社施設「Workcation Place 花伝舎」の概要と、同施設における取組みを紹介します。
自然共生サイトに認定された花伝舎で観察できる動植物や、生物多様性保全に向けた園内整備の状況(有機たい肥を用いた土づくり、チョウ類の食草管理、動植物のモニタリングなど)の説明。
これらの取組みを広く発信し、環境意識の向上を図るための花伝舎を活用した広報活動(環境教室の開催による子どもたちへの学習機会の提供や、オープンガーデンイベント等を通じた地域住民への啓発活動など)の紹介。
花伝舎での活動を持続可能なものとするための工夫や運営面での取組み(社員研修や企業認知度向上など複数の役割を持たせるとともに、経済的自立を目指したオリジナルハーブ製品の開発・製造など)の紹介。
紹介サイト  https://www.miyama.net/products/workcation-place/workcation-place-1.php
イベントなど         毎年開催するオープンガーデンや市内の小学生を招待しての環境教室(79月)の他、長野市と連携した蝶の観察会やSDGSバスツアー、五感で楽しむグリーンハーモニーコンサート等。

小林正征氏

ミヤマ株式会社の報告のタイトルスライド

(2) シチズン時計株式会社・シチズンファインデバイス株式会社
サイト名              シチズンファインデバイス自然保護区域
所在地(面積)     長野県東御市八重原353 (1.32ha
発表者(役職)     塚田京子(シチズン時計(株)執行役員)
          古川敬二(シチズンファインデバイス(株)人事総務部総務課 課次長) 
発表タイトル         自然共生サイトとオオルリシジミ保護活動の紹介
発表要旨
   シチズングループでは、グループ生物多様性ビジョンに基づき、事業を行う地域の生物多様性に関する課題解決や保全活動を継続。2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全する環境省の「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」に賛同し、2023年度に同アライアンスに参画。シチズンファインデバイスでは、長野県東御市にある北御牧事業所において、長野県の一部地域と九州の阿蘇地方でしか生息が確認されていないオオルリシジミ(シジミチョウ科、絶滅危惧種Ⅰ類)の保護活動を実施。事業所敷地内の生息環境を整備や、「北御牧のオオルリシジミを守る会」とも連携し親子観察会を開催するなど、生物多様性の保全活動を通じて地域社会との共生にも取り組む。
紹介サイト            https://www.citizen.co.jp/sustainability/environment/biodiversity.html
                               https://cfd.citizen.co.jp/csr/oruri00/
イベントなど         毎年5月に開催している親子観察会への協力

塚田京子氏(シチズン時計)     古川敬二氏(シチズンファインデバイス)

報告のタイトルスライド

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(3) ニゴと草カッパの会                 
                 サイト名               木曽馬の里地里山
                 所在地(面積)     長野県木曽町開田高原(0.85ha
発表者(役職)     田澤佳子(会長)
発表タイトル        木曽馬の里地里山 木曽馬文化と草原の再生
発表要旨
                このサイトは、採草地の自然とその維持に関わる野草利用の木曽馬文化を次世代に伝え、文化と共に生物多様性を保全するフィールドです。 生物多様性と地域文化の多様性とのつながり、人間活動が維持してきた里地里山の価値を広め、現代の生活に利活用できるような取り組みを目指す。木曽馬の飼葉を採取した採草地の伝統的管理の維持と再導入によって、草地の自然の維持と再生活動をしている。当初より研究者や木曽馬保存会等との協働により始まった活動は、市民ボランティア派遣を行うNPOの支援や、木曽地域外の団体等の協力等関係人口を増やし、過疎高齢化が進み里地里山のさらなる荒廃が危ぶまれる地域において、生物多様性と地域文化を資源として、人のつながりを地域外に広げている。
                 紹介サイト            https://www.facebook.com/nigotokusakappa/
イベントなど         5月草地観察会、7月動植物調査、8月盆花摘み、9月採草活動、等を開催

田澤佳子氏

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(4) 大峰高原里山整備利用推進協議会
サイト名              大峰高原生物多様性保全エリア
所在地(面積)     北安曇郡池田町(116ha
発表者(役職)     宮田紀英(協議会員)、棚橋英明(協議会員)
発表タイトル        大峰高原における活動事例について
発表要旨
大峰高原は池田町北部に位置する標高約1000mの高原である。南北に約3kmのなだらかな稜線が続き、近代まで稜線一帯を中心に草原が広がっており、今日も草原性の希少動植物をはじめとした二次的環境を好む動植物の生息・生育地として重要な場所である。また、町内随一の観光地であり、七色大カエデ、中カエデ、白樺の森、キャンプ場、雲海スポットといった自然資源が活用され、秋季には県内外から年4万人が来訪する。
森林エリア、草原エリア、観光地エリアそれぞれで活動が行われている。森林では、協議会が主体となり、年2回の灌木間伐ボランティア活動とパッチ状の草地創出を目指した間伐を実施し、間伐後の植生調査やトレイルカメラを用いた哺乳類の調査を実施している。草原では、「わかぜん」が主体となり、丈の異なるさまざまな草地をパッチ状に配置するゾーニングを行い多様な草原環境を創出している他、希少種の保全活動を実施している。観光地エリアでは、「池田町観光協会」が主体となり銘木「七色大カエデ」の定期検診や、「白樺の森」再生のための明るい環境創出を実施している。
紹介サイト           
イベントなど         毎年610月:森の里親事業 毎年5-6月:希少種観

棚橋英明氏 宮田紀英氏

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(5) アルプスあづみの公園管理センター
サイト名                国営アルプスあづみの公園 里山文化ゾーン
所在地(面積)    長野県安曇野市堀金烏川33-4付近(46.3ha
発表者(役職)     髙橋 あさひ
発表タイトル         里山文化ゾーンにおける取組みについて
発表要旨
里山文化ゾーンは古田と草地が中心の半自然環境であり、市内天然記念物オオルリシジミのような里山を代表する動植物が残る貴重な環境である。しかし、都市公園の性質上景観の維持管理のため草刈りや造成といった作業は少なくなく、フィールドにおけるモニタリングの担い手不足は他のフィールド同様重要な課題である。
今回はこういった課題により動植物や担い手が失われることのないよう実施している「選択的草刈り」や、協働団体による維持管理作業の一部を紹介する。
紹介サイト            https://www.azumino-koen.jp/horigane_hotaka/index.php
イベントなど         季節ごとに観察会を開催 ※冬季は頻度が下がります。

高橋あさひ氏

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(6) 株式会社五竜
サイト名                 白馬五竜高山植物園
所在地(面積)     長野県北安曇郡白馬村(6.07ha)
発表者(役職)     長嶋麻美(索道営業部植物園管理)
発表タイトル         白馬五竜における自然共生サイトと保全の取り組み
発表要旨
当園は、スキー場であり植物園でもあるという業態特性と、高山帯に位置する立地特性を活かし、自然の恵みに支えられながら、希少な高山植物の保全・管理や植生回復、絶滅危惧種の保全に取り組んできました。こうした活動の基盤として、開園から25年にわたりブナ林と草地の継続的な管理を行い、生物多様性の維持を図っています。あわせて、再生可能エネルギーの導入など、自然環境への配慮を経営全体に組み込んだ運営を進めてきました。さらに、学芸員によるガイドツアーや地域の教育機関と連携した環境分野の学びの場を提供しています。近年では、ライチョウ等の保護増殖事業として食草提供を行うなど、具体的な保全活動にも寄与してきました。こうした一連の取り組みが総合的に評価され、2025年に自然共生サイトとして登録されました。今後も、観光と保全を両立し、自然と共に持続的に発展することを目指します。
紹介サイト            https://www.hakubaescal.com/shokubutsuen/
イベントなど         毎月三連休に学芸員ガイドツアー、地元生徒らによるライチョウ食草提供イベントを年1回開催
 

長嶋麻美氏

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(7) カゴメ株式会社
サイト名                 カゴメ野菜生活ファーム富士見
                 所在地(面積)     長野県諏訪郡富士見町富士見9275-1 (5.2ha
発表者(役職)     綿田圭一(カゴメ株式会社 経営企画室 サステナビリティグループ
                                                      能力開発・戦略企画担当)
発表タイトル         カゴメ野菜生活ファーム富士見における生物多様性の取り組み
発表要旨
                自然共生サイトに認定されたカゴメ野菜生活ファーム富士見(以下本サイトと略す)は、長野県諏訪郡富士見町の標高950mに位置する農地と草地を中心としたサイト。工業・農業・観光が一体となった「野菜のテーマパーク」をコンセプトに20194月に開業し、野菜と豊かにふれあいながら、農や食、地域の魅力を体験できる施設である。本サイトでは、在来植物の植栽(45種1万本)及び天敵を集める仕掛けの設置による動植物の生育・生息環境整備の活動が「農地生態系の動植物の保全と復元」につながり、土着天敵が観察され、病害虫の防除が期待でき(調整サービス)、在来植物を植えることで美しい郷土景観が形成されている(文化的サービス)。また、生物多様性の主流化のための教育として、学習やレクレーションの機会を提供しており(文化的サービス)、これらも評価された。本発表では、本サイトの自然共生サイトの認定にあたり、評価いただいた生物多様性保全の取り組みを紹介する。
紹介サイト            https://www.kagome.co.jp/ysfarm/
イベントなど         ひまわり迷路:地域の方々と一緒に種を植えて育てたひまわり畑の迷路(8月中下旬開催)

 
綿田圭一氏

報告のタイトルスライド

15:40  パネル展示のみの団体紹介
司会の江田さんから取り組み報告の発表はしていないがパネルを展示しているサイトの紹介があり,サイト代表が1分間スピーチを行った.展示されているパネルの写真はこのブログの最後にすべて紹介してあります.

15:52 ディスカッションと情報交換
 コーディネーター:福江佑子(あーすわーむ)・須賀 丈(長野県環境保全研究所)
演者の数野氏,環境省信越事務所の松本所長,長野県自然保護の岩井課長,環境保全研究所の浜田自然環境部長とフォロアーの皆さんを交えての質問や意見交換の時間.

コーディネーターの福江さんから長野県の取り組みについて質問があり,岩井課長が最近できたばかりの長野県生物多様性センターの取り組みについて説明,また浜田部長は開発途中の動物や鳥の鳴き声の自動録音から種類を判別する装置を紹介した.フォロアーから環境省へ共生サイトへの申請の具体的な質問や生物多様性の保全についての意見がでたりして,準備した時間はあっという間に経過してディスカッションと情報交換の時間は終了しまた.

  

ディスカッションは環保研の須賀さんとあーすわーむの福江さんの進行で始まった
コーディネーターの福江さんから長野県の取り組みについて質問


岩井自然保護課長が長野県生物多様性センターを紹介した


左から浜田氏,岩井氏,スライド担当の坂口氏(自然保護課),数野氏,松本氏

    
最後にきずな会長から参加者にお礼

16:42 閉会

  204会議室のパネル展示会場
フォーラムが終わってからも,多くの方がパネルを見に来られてタイムアウトになるまで熱心に情報交換がなされていた.以下に展示パネルを紹介します.

パネルを展示した自然共生サイトの一覧

(1) タングラム斑尾東急リゾート

(2) サンクゼールの森

(3) アファンの森 北エリア

(4) Workcation Place 花伝舎

(5) 白馬五竜高山植物園

(6) 大峰高原生物多様性保全エリア

(7) 高瀬川中下流域

(8) HIOKIフォレストヒルズ

(9) 長野県北佐久郡軽井沢町周辺、
フォレストコーポレーションの建設した住宅の庭

(10) シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード

(11) シチズンファインデバイス 自然保護区域

(12) 東京ガスの森

(13) 国営アルプスあづみの公園 里山文化ゾーン

(14) 木曽馬の里地里山

(15) カゴメ野菜生活ファーム富士見

(16) 鳩吹山

(17) 中央アルプス駒ヶ岳山麓の里山エリア

各自然共生サイトのパネルに加えて,環境省からは以下のパネルが展示された.









17:00 パネル展示終了(204会議室)

主催:信州生物多様性ネットきずな, 長野県(自然保護課・環境保全研究所)
協力:ミヤマ株式会社,環境省信越自然環境事務所
後援:公益財団法人日本自然保護協会