2018年12月8日土曜日

「きずな」が2018年度「トヨタ環境活動助成プログラム」の助成プロジェクトに採択


信州生物多様性ネット きずなは,2018年度「トヨタ環境活動助成プログラム」の国内小規模プロジェクトの生物多様性分野に応募しておりましたが,この度めでたく助成プロジェクトに採択されました。

「トヨタ環境活動助成プログラム」
(https://www.toyota.co.jp/jpn/sustainability/environment/challenge6/ecogrant/)
の助成決定書

プロジェクト名:「長野県安曇野における絶滅危惧種オオルリシジミ分布拡大のための協働プロジェクト」

プロジェクト概要:長野県安曇野市において絶滅危惧種オオルリシジミを対象に,きずながプラットフォームとなり協働で保全活動に取り組む「人のネットワークづくり」と食草のクララを植栽して「チョウのネットワークづくり」を実施してオオルリシジミの分布拡大を目指す。そのために全国規模のオオルリシジミサミット、生息地での観察会や学習会を実施する。さらに食草のクララの栽培と移植イベント、マーキングや卵・幼虫のモニタリング、DNA解析などを実施する。


助成プロジェクトの対象となった絶滅危惧種のオオルリシジミ
2018年6月2日国営アルプスあづみの公園保護区調査中のナンバリングされたメス個体
プロジェクト実施対象のオオルリシジミは、瑠璃色の翅をもつ大型のシジミチョウで、
幼虫はマメ科のクララのみを食草としている。かつては東北や関東地方にも広く生息し、
里山の人々の暮らしとともに生きてきた草原環境を代表するチョウであったが、今では
絶滅危惧Ⅰ類にランクされ長野県の一部と九州の阿蘇地方にしか生息していない。特に長野
の本州亜種は条例で採集が禁止されているにもかかわらず、農業技術と生活様式の変化に
伴い食草のクララが減少して分布域は縮小するのみで、小さな3地域の個体群が地域の
人々の保護活動によって僅かに生き残っているにすぎないこのままでは個体群の
遺伝的多様性がなくなる危険性もあり、早急な対策が必要とされている。


 期間は2019年1月1日から2020年12月31日までで,この間に,第1の目的である「人のネットワークづくり」のため、本州と九州の保全団体の交流を図るオオルリシジミ・サミットを開催し、オオルリシジミをはじめとする草原の生物多様性保全の必要性を全国規模で啓発する。現在環境省南阿蘇ビジターセンターや熊本県への協力を依頼中。さらに地域住民を対象とした観察会や学習会等を実施。
 第2の「チョウのネットワークづくり」のため、食草のクララの栽培とクララの移植イベントを実施。さらに成虫のマーキング調査から本種の行動生態に基づいたクララ植え付けマップを作成。またDNA解析を行い個体群内の遺伝子の多様性を評価する。
 最後にモニタリング調査のデータを分析して、本プロジェクトの評価・検証を行い次の安曇野に舞うオオルリシジミ復活事業に活かしていく。

 12月6日に東京のトヨタ紀尾井倶楽部で助成決定書授与式が行われ,きずな会長の中村が代表で出席しました.

決定書授与式で選考委員の鈴木東大名誉教授が講評
チョウセンアカシジミの保全で助成を受けた
岩手山麓自然学校の代表(左)と一緒に
 実施担当者は,中村寛志(会長),江田慧子(事務局長),那須野雅好(幹事)の3名の名前で応募しましたが,これから皆様方の協力をあおいで,安曇野のオオルリシジミ分布拡大のため,「人のネットワーク」と「チョウのネットワーク」作りのプロジェクトを進めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします.

2018年9月3日月曜日

信州昆虫学会の公開シンポジウム報告


平成3091日(土)に9回 信州昆虫学会大会が信州大学 理学部で開催されました.午前中は会員の一般講演で下記の8題の発表がありました.
1.「中央アルプス北部における糞虫相」上木 岳(信州大院・総合理工)・泉山 茂之(信州大・山岳科学研究所)
2.      「山岳河川源流棲昆虫トワダカワゲラの東北地方における遺伝的分化要因の解明」小池 花苗(信州大院・総合理工)・吉井 幸(信州大・理学部)・東城 幸治(信州大・理学系)
3.      「ヒゲナガカワトビケラ類の系統進化・系統地理」斎藤 梨絵・加藤 慎也(信州大院・理工学)・倉西 良一(千葉県立中央博)・野崎 隆夫(神奈川県二之宮町)・藤野 毅(埼玉大・工学部)・東城 幸治(信州大・理学系)
4.      「子ども向けのオオルリシジミの教材開発と実践」江田 慧子・木場 有紀・新家 智子(帝京科学大・教育人間科学部)
5.      「辰野町荒神山のミヤマシジミ個体群の変遷」中村 寛志(ミヤマシジミ研究会)・土田 秀実・小野 章(辰野いきものネットワーク)・加藤 大輝(アメニス)・江田 慧子(帝京科学大・教育人間科学部)
6.      「ウラギンヒョウモン2系統(2種)の分布について」伊藤 建夫(信州大)・濱本 健汰(信州大・理学部)・北原 曜(伊那市)・市野 隆雄(信州大・理学系)
7.      「霧ヶ峰の防鹿柵による訪花昆虫への効果」須賀 丈(長野県環境保全研)・中浜 直之(東京大)・内田  圭(横浜国大)・小山 明日香(東京大)・岩崎 貴也(神奈川大)・尾関 雅章(長野県環境保全研)
8.      「トンボは本当に目が良いのか?石澤 直也( 信州昆虫学会, 埼玉昆虫談話会)

信州昆虫学会第29回大会記念撮影
2018.9.1 信州大学理学部

公開シンポジウムのポスター

午後は,信州多様性ネットきずなが後援した公開シンポジウム「昆虫と植物のふしぎな関係が生み出す種多様性」があり,若手の研究者から次の4題の講演があり,最後に市野 隆雄信州大学理学部長と井坂 友一コーディネーターを交えて総合討論がありました.
講演1. 「マルハナバチの多様性は花の多様性に影響するか: 標高に伴って変化するハチと花の種間関係」   江川 信 氏(信州大学院 総合工学系研究科)
講演2. 「種特異的な餌要求量からさぐるホソオチョウとジャコウアゲハ間の相互作用」 
橋本 洸哉 氏(近畿大学 農学部)
講演3. 「この樹の上には何がいる? 樹木の個性が集まる虫たちを予測する」   鍵谷 進乃介氏(北海道大学 環境科学院) 
講演4. 「植食性テントウ、エピラクナが問うとは何か」   松林 圭 氏(九州大学 基幹教育院)

シンポジウム風景


熱心に聴講する参加者



2018年5月28日月曜日

アルプスあづみの公園のオオルリシジミ観察会に協力

Shijimiaeoides divinus barine 2018 May 17
Azumino City, Nagano Japan

 
 2018 年5 月27 日(日)国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高地区で「オオルリシジミ保全のための自然観察会・クララの移植状況調査」が行われました.今年もオオルリシジミがアルプスあづみの公園で美しいブルーの舞いを見せてくれました.
 この催しは,アルプスあづみの公園管理センターが主催し,安曇野オオルリシジミ保護対策会議、公益財団法人日本自然保護協会が共催,長野県松本地域振興局,安曇野市,信州生物多様性ネットきずな,みのむしの会,岩原の自然と文化を守り育てる会が協力しました.きずなの中村会長、江田事務局長が講師として参加しました.

観察会の開会

 参加者は約40名で,東京や横浜から来られた方もありました.当日午前は、江田事務局長のスライドレクチャーをはじめ,実際に園内に生息しているオオルリシジミやマーキングのやり方を観察しました.
 午後は、昨年みんなで移植した食草クララの定着状況やクララの花穂に産まれたオオルリシジミの卵をカウントする調査を専門家と一緒に行いました.

園内の保護区でオオルリシジミを観察

オオルリシジミのメス

移動範囲調査のためにマーキングされたメス個体

オオルリシジミ保護の歴史を説明する
安曇野オオルリシジミ保護対策会議の那須野会長

産卵中のオオルリシジミ
安曇野の美しい里山風景が残る
国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高地区

観察会の案内

2018年2月4日日曜日

第3回きずなフォーラムを実施しました

第3回きずなフォーラム『地域資源を保全し活用するエコツーリズム~その戦略と課題~』は,2月3日(土)の午後1時から長野市勤労者女性会館しなのきホールにおいて開催されました.100名もの参加者があり,パネルディスカッションでは熱心に信州のエコツーリズムについての議論がなされました.
しなのきホールにおいて開催されたきずなフォーラムの
パネルディスカッションの様子

 基調講演では北陸先端科学技術大学院大学の敷田麻実教授から,「地域資源を活かす持続可能な観光」と題して,エコツーリズムの仕組みから持続可能な価値を創り出す観光についてのお話がありました.
北陸先端科学技術大学院大学の敷田麻実教授の基調講演

敷田麻美教授のレジメから

事例報告では,実際にエコツーリズムに関わっておられる4名のパネリストの方々に実践活動や課題を紹介してもらいました.
4人のパネリスト.右から高橋氏,須賀氏,山田氏,東城氏,
左端は進行の陸氏(パネルディスカッションタイム)


・「信州におけるジオツーリズム・エコツーリズムのポテンシャル」 
                 東城幸治氏(信大理学部 教授)

東城先生のレジメから

・「霧ヶ峰インタープリテーション」
                 山田祐子氏(霧ヶ峰自然教室 室長)

山田氏のレジメから

・「知識産業としてのエコツーリズム」
            須賀 丈氏(長野県環境保全研究所 主任研究員)

須賀氏のレジメから

・「南信州型ツーリズムの実践」
             高橋 充氏(南信州観光公社 代表取締役社長)
高橋氏のレジメから

休憩・交流タイムでは参加者同士や講師の敷田先生やパネリストの皆さんとの交流が行われました.交流タイムの後,長野県環境保全研究所自然環境部長の陸斉氏の進行で,パネルディスカッションが行われ活発な議論が行われ,午後4時30分にすべてのプログラムが終了しました.


ロビーでの交流タイムの様子